一世帯分の既存建物に、もう一世帯分の生活スペースと仕事スペース及びピアノ教室を増築した複合住宅です。周辺建物からの視線が気になるということで、その視線が気にならないように新築部分の建物のボリュームを考えました。その結果、外観は閉鎖的に見えるものの、一度中へ入ると大変開放的なつくりとなっています。新築部分の屋根は、金属屋根から、ピアノの防音目的の屋上庭園、木製デッキへとスパイラル状に伸び、さらには既存部分及び新築部分の各部屋へと繋がっていきます。ここでは、この屋根が、新築部分と既存建物を結び、また外での食事や家族の団欒など生活の一部を担っています。屋根の上からは、屋上庭園と中庭の緑、そして大きな空が望め、また民家越しには海や山が垣間見えます。変わりゆくまち並みの中にあっても変わらずにある周辺環境を取り込んでいます。
種別;複合住宅
用途;住宅、ピアノ教室、オフィス
規模;延床面積 388.20㎡(新築部分;269.21㎡、既存部分;118.99㎡)
構造;木造2階建て
竣工日(新築部分);2011年7月
写真家;鳥村鋼一
外からは中の様子が分からないように最小限の開口部のみとしています。
道路角部分は、自動車などの防音のため、基礎部分を立ち上げ、鉄平石貼りとしています。
中庭を囲むように、木製デッキ、屋上緑化、金属屋根とスパイラル状に屋根を伸ばし、周辺建物からの視線をカットしています。
屋根の上からは、民家越しに鎌倉の山々が望めます。
屋上庭園には、野芝、イトススキ、ハーブ類を植えています。ハーブ類は、浴槽にいれたり、料理に使う他、綺麗な花を咲かせます。また秋になると、野芝がほんのり赤く色づき、イトススキは穂を出し、季節の移ろいを楽しめます。
屋上の木製デッキは、既存部分(右側)と新築部分を繋ぎます。ここでは、外で食事をしたり、洗濯物を干したり、読書したりと、生活空間の一部となっています。
屋上デッキからは、大きな空が望めます。
メインエントランスから入ると、まず中庭にでます。中庭には2種類のモミジを4本植えています。グランドカバーにはディコンドラを植えています。
メインエントランス(右側)から入り、リビング側玄関をみたところです。左側が中庭になります。中庭にも風が通り抜けるように、アルミパンチングの建具を設けています(右側)。
1階リビングルームです。階段を登ると屋上デッキへと繋がります。道路側(右側)には、防音のために本箱を設置しています。
一部吹き抜け天井としトップライトを設けています。ここから光と風を通しています。吹き抜け部分の一部を金色に塗装したことで、黄色い光が落ちてきています。
リビング部分と中庭の一体性を高めるために、大型開口をとり、また床のレベル、仕上材も内側と外側で揃えています。
1階から階段を登ると洗面所、浴室、そして屋上デッキへと繋がっていきます。
柿渋色に塗られた階段になります。西日が入ると柿渋色の壁が反射し、1階リビング・ダイニングへ赤色の光が落ちていきます。階段先には寝室があります。
浴室からも屋上庭園の緑や中庭の緑が見えます。風呂あがりに屋上デッキで涼しむことができます。洗面所で歯をみがきながら、屋上庭園を楽しめます。
寝室には出窓をとることで、中庭やデッキ部分との関わりを図っています。ベンチのようにここに座ってくつろいだり、布団を干したりと多用途に使うことができます。また窓サッシ側にブラインドを設置し、手前側にはカーテンを設けることで、断熱性も高めています。
ピアノのミニコンサートができる部屋です。防音性能と音響性能を兼ね備えた部屋になります。防音性・断熱性を高めるために、天井上は屋上緑化としています。