愛知県犬山市内、木曽街道近くの田圃のなかに建つ住宅です。
ご夫婦と息子さんの3人家族の住まいとして、「佇まいは控えめなイメージ、でも他にはない建築を」とご希望をいただきました。
建築の構成は、木造平屋建て、機能的でシンプルな平面とし、中央にはコモンシェルフと名付けた東西に伸びる大きな壁面収納を設けています。これに沿う約13mの奥行きを持つメインの居住スペースでは特に、家族の気配、光と風が自然と感じられる おおらかな空間のつくりを目指しました。その一部をご夫婦の趣味である自転車をメンテナンスできる土間室とし、また室内動線を路地のような設えとしたことで、かつてこの地域の町家にみられたコンテクストにも呼応するような(住宅内部に少しだけパブリックなスペースを感じる)イメージがつくられました。
外装は、木板張り(レッドシダー)壁面とガルバリウム鋼板屋根の2要素にまとめましたが、木の経年変化によって やがて屋根のシルバーグレー色へ馴染んでいくことを想定しています。
また軒高を低めに設定し、地域に古くからある建築スケールのような控え目な佇まいに近づけようと考えました。そのほか建築の造形的には、建築の対称性を僅かに崩すような角度の操作を加えていくことで、建築の持つ厳格さをやわらげ、優しく風景に溶け込ませながら独自の存在感を生み出そうと試みました。
普通のものを普通に用いて、「控えめなのにどこか普通でない建築」が創り出せたのなら、依頼主様と私たち設計者、施工者の想いが良い形で実現できたと言えそうです。
photo:Shigeo Ogawa
軒高を抑え、建築全体を控え目な佇まいとしています.
屋根の勾配・折れ方などで、独自のプロポーションを検討しています.
斜に構えたシンプルな門柱がゲストを迎えます.
外壁:レッドシダー
ウッドデッキ:サイプレス
開口:木製格子網戸
屋根:ガルバリウム鋼板
西妻壁面は、僅かに開いて矩形平面に変化を与えています.
遠方まで眺望の良い開口部には LOW-E複層ガラスを採用.
建具を開放すると、玄関コンクリート土間に隣接するリビングと一体的な居室空間となります.
建具を閉めた様子. 通常は趣味の自転車を置き、メンテナンスもできるスペースに.
コモンシェルフと名付けた家族供用の収納スペースを動線に沿わせ長く配置(各個室内に極力 造付け収納を設けず集約). お子さんの成長やライプスタイルの変化にも対応します.
コンクリート土間の右はリビング、左は趣味室(子供室)
玄関扉は木製片引戸とし、自転車やベビーカーの出し入れ時に(開き扉より)扱い易く.
地域の伝統的な町家に見られた土間空間を現代的にアレンジ. 居室全体に伸びやかさと半パブリックな空気感をもたらします.
土間室はコンクリート躯体に蓄熱し、緩やかに輻射暖房するため、冬期も快適な居住性を確保。
住宅を一体に感じられる空間構成. 家族がそれぞれの場所で活動していても、お互いの気配を感じながら過ごすことができます.
屋根・天井勾配は左右非対称
一体空間に路地のような動線
キッチン正面パネルに小さな開口. 家事作業中も視線が行き届きます.
勾配天井に光がバウンスし空間に広がります.
造作テーブルの1段高い部分は、料理で必要なアイテムを下部に格納できる作業台です.
みんなで料理をつくり、楽しく食べます.
高さを抑えたベッドルーム内には構造材(登り梁)を見せています.
シンプルかつ機能的な配置
夏、周辺の田んぼの稲が一面に広がり、建物がポツンと浮かんだように見えます。
背景の山並みにも呼応する折れ屋根
アプローチ脇の地被植栽は、イワダレソウ(右)と芝(左)