閑静な住宅街にある夫婦と子供2人が暮らす「湯里の家」。
昔、この地から湯が湧き出したことから「湯里(ゆざと)」という地名が生まれた。
ファサードは湯が湧き出す現象を袖壁と鉄のルーバーで表現。
あたかも、地面より湯が湧き出たかのようなデザインとした。
内部においては、1階から屋上まで連続的に繋がる螺旋形の階段を最上階の天井からの吊り構造とし、
地下の暗闇から地上の太陽のもとへ湯が上がっていく現象を滑らかな曲線で演出した。
1階は、趣味室を兼ねた駐車場、玄関とホールで構成。
駐車場には、クライアントの趣味である車やバイクなどが並び、
その愛車を玄関やホールより眺めながら家の中を進んでいく。
また、玄関とホールには大容量の壁面収納を設け、上部には間接照明の演出を施した。
そんなホールの先には、上階へとつながる階段をそっと添えた吹き抜けがあり、無意識の空へと意識は向く。
2階に上がれば、一体として造り付けたキッチンとダイニングテーブル。そしてその先にはリビングがある。
すべての家具を造り付けとすることで無駄を排除した。
キッチンは4Mのステンレスの天板を使用したオーダーメイドで、ダイニングテーブルと一体とすることで、
キッチン作業が効率的にできるよう配慮。
また、キッチン収納は扉を設け、突然の来訪者の際には生活感を覆うことができ、空間と一体ととなり、
すっきりと見えるようにした。
他に2階には、浴室、洗面所、便所を設け、生活の大半をこの空間で済ませるようにした。
そして空へとつながる階段をのぼり3階へいく。そこには家族のための休息の室が広がる。
階段を挟んで、北側に夫婦の寝室とウォークインクロゼット、そしてテラス。南側には子供たちの室がある。
住まいには将来のフレキシブルな対応が必要なのは言うまでもない。
まず、北は夫婦の寝室、南は可動間仕切りで分けたそれぞれの子供部屋として使われる。
将来の家族の変化に対応し、その室の主人も代わる。
南が夫婦にための寝室に。そして、これまで夫婦の寝室だった北は夫婦の趣味の室へと変わるのである。
その3階を通り過ぎ、さらに階段を上がるとガラスで囲ったペントハウス部分に到達する。
屋上テラスではバーベキューや少しの休息が取れるようになっており、周囲を一望することができる。
また、ペントハウスをガラス張りとし、また3階の廊下の床をFRPのグレーチングとしたことで光が透過し、
階段の吊られた吹き抜けを介して、1階まで自然の光が届く。
この住まいの光の源である。
階段はこの住まいの中心にある。
ここは、住まいの大切な役割である空気の流れ、そして上下の空間の繋がりを生む湯里の家の象徴である。
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家族構成: 夫婦+子供2人
用途: 専用住宅
構造: 鉄骨造 地上3階建
敷地面積: 93.13㎡
延床面積: 166.46㎡
竣工: 2012年
写真撮影: 多田ユウコ (多田ユウコ写真事務所)
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南側ファサード。
袖壁とルーバーが湯が吹き出る様子を表現。
夜にはやわからく光がこぼれる
東側には吹抜けに設けた大きなFIX窓が見える。
クライアントの趣味である車やバイクが並ぶ駐車場。
趣味室も兼ねる。
ホールから上階へ続く階段をみる。
あかたも光の中へ吸い込まれていくかのよう。
左には駐車場がガラス越しに見え、クライアントの愛車を眺めることができる。
2階の階段より、キッチン、ダイニング、リビングをみる。
色数を抑えた白・黒・グレーのモノトーンとし、上品な空間に。
リビングよりダイニング、キッチンをみる。
キッリンとダイニングテーブルは一体で製作。
キッチン収納に扉を設け、すっきりとした印象に。
リビングよりダイニング、キッチンをみる。
階段のある吹き抜けには大きな窓を設け、柔らかく光が入り込む。
階段は緩やかな弧を描きながら3階へと続く。
階段は最上階からの吊り構造とした。
最上階より階段を見下ろす。緩やかな弧を描く。
3階の廊下をFRPのグレーチングとしたことで、透過した光が下の階まで届く。
また、違う階に居ながらも、気配の感じ取れる空間とした。
北側の室。
南側の室。
可動間仕切りで区切り、将来の家族の変化に対応することができる。
屋上からは遠くの景色まで眺めることができる、休息の場となった。
階段のある吹抜けに設けたFIX窓。