株式会社伏見屋一級建築士事務所が手掛けたmaison M | homify
株式会社伏見屋一級建築士事務所

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maison M

2025年問題。我が国は世界に先駆けて超高齢化社会を迎える。

私は、この時代を生きる建築士として首都圏近郊の郊外住宅地に注目している。

戦後、団塊世代の憧れの結晶であったマイホームはアーバンスプロールを生み出し、文字通りのニュータウンを創りあげた。しかし今や彼らは超高齢化社会の主人公となり、街は転居や孤独死などにより空き家化が進む。無策のままでは理想郷からスラムへと緩やかに変貌するのは想像に難くない。

建築士といえば設計し施工者と建築物を創り上げるのが生業、世間ではそのように映るらしいが、その対象は「衣食住」という言葉の通り、人々の生活の基礎であり社会資本である。しかし、その資本を豊かにする前提で闇雲に設計施工を行う行為は量の時代の幻影に過ぎない。また時代に呼応した施設整備を質の時代の象徴とするのも同様であろう。私には、新規の開発自体がもはや時代の変化に呼応していないように映る。ここに注目し、日々思考を巡らせている。

しかし日本での建築設計行為は、契約書の表題が示す通り請負業務に分類される。これに甘んじれば単純にニーズに呼応する仕事なのだから、先の指摘は国策の問題として線引く事も可能だ。しかし、これでは実空間を創り上げる専門家として、あまりに刹那的であり無責任だ。

そのような葛藤を胸に、また設計行為の周縁に向けて行動範囲を拡大する目的もあり、2013年秋に独立した。しかしその背景に、ある実務経験があった。独立の4年前、2009年の初秋に竣工した本計画。私の処女作である。

建築主は、義父との二世帯居住に伴う既存住宅の改修を希望した。計画地は、数十年前に宅地開発された多摩地方の住宅地である。本計画は家庭事情による移転のみならず、子世帯が既存のコミュニティに入る(地元に戻る)ことを意味していた。確かに、子世帯は我が子の成長を通じて各種コミュニティに参加する機会に恵まれ、彼らはフットワークが軽く柔軟性がある。高齢者を子世帯に呼び寄せるよりも精神的負担が少なく、親世帯は地元で晩年を過ごすことが約束される。

実は建築主と私は学生時代からの友人である。趣味や価値観も近く、出身こそ違うが共に郊外住宅地に原風景があり、また自然が豊かな多摩地方を望む価値観も理解し合える。従って、専門用語を除けば、言語や価値観の壁は殆ど感じられない。設計打合は、双方の感性を確認し呼応するジャムセッションのような流れで穏やかに進められた。

しかし住宅設計は家族の深部に踏み込む必要もある。それも短期間で核心に迫らねばならない。また二世帯居住の場合は、世帯毎に生活習慣が異なる場合もあり、その差が時として家族関係に距離を生むリスクもある。これでは計画論以前に本末顛倒である。

そこで本計画では、設計行為を通して人間関係の再構築(再確認)と心の準備をしていただく目的で、不定期ながらも全員参加のワークショップのような打合も試みた。途中、夕食を共にさせていただいたり、深夜に送迎していただいたりと迷惑もおかけしたが、結果的に単なる老婆心であったことに気づき安堵したことを覚えている。

施工の過程においても多くの試みを詰め込んだが、特に品質面では、簡素ながらも各所の漏水のほか耐震性能の現況診断を実施した上で改修工事に着工した。築年数のわりには珍しく壁下地に木摺が設えられており、匠の丁寧な造作に関心した。(実は竣工当時の大工が現役と判明し再発注する案も湧き出たが、諸事情で叶わなかったのは残念だ。時の変化を感じる一幕であった。)

多摩地方といえば、都心への通勤地獄が推察され、またその将来像に対し冷ややかな意見も耳にする。しかし、昨今は場所を選ばずに仕事が出来る就労環境が整いつつあり、また郊外を不利とも言い難い時代である。米西海岸のパロアルトやクパチーノなどはその最たる例であり、実際に本作の建築主は著名なSNSサイトも手がけたシステムエンジニアである。

自己と向き合い心地よい空間のポエムを語る住宅作家で居続けることも可能であっただろうが、建築士として社会の諸課題にアプローチする必要性を教えてくれたのは、相違なく本計画であったように思う。

(撮影:松崎直人)

  • ​廊下: 株式会社伏見屋一級建築士事務所が手掛けた廊下 & 玄関です。

    ​廊下

    居室・収納を最大限に確保するため、廊下は必要最小限幅としている。

  • ​居間: 株式会社伏見屋一級建築士事務所が手掛けたリビングです。

    ​居間

    ウォークインクローゼット側に飾台を設けた。

  • ​バーカウンター: 株式会社伏見屋一級建築士事務所が手掛けたリビングです。

    ​バーカウンター

    レンガタイルは色柄にムラがあるためメーカーを直接訪問し決定した。

  • ​小屋根物置: 株式会社伏見屋一級建築士事務所が手掛けたウォークインクローゼットです。

    ​小屋根物置

    収納でありながら隠れ家のような空間となった。

  • ​洗面所&シャワー室: 株式会社伏見屋一級建築士事務所が手掛けた浴室です。

    ​洗面所&シャワー室

    この写真を使ったエディターのアイディアブック
    アイディアブック: 1
    ["JP"] [Published] 継続できる6つの節約術まとめ

    施主希望により水廻り空間にも改修工事のイメージを踏襲した。

    なお本工事の壁付照明は全て施主支給である。

  • ​主寝室: 株式会社伏見屋一級建築士事務所が手掛けた寝室です。

    ​主寝室

    間仕切壁は収納や三面鏡により構成され多様な用途に応える。

  • 子供部屋: 株式会社伏見屋一級建築士事務所が手掛けた子供部屋です。

    子供部屋

    雁行した部屋の平面は使い方に変化を呼ぶ。

  • ​建具の小窓から階段室を覗く: 株式会社伏見屋一級建築士事務所が手掛けた廊下 & 玄関です。

    ​建具の小窓から階段室を覗く

    階段室は子世帯の第二の玄関となっている。

  • ​ウォークインクローゼット: 株式会社伏見屋一級建築士事務所が手掛けたウォークインクローゼットです。

    ​ウォークインクローゼット

    小屋根物置への昇降梯子が影をつくる。

  • 便所: 株式会社伏見屋一級建築士事務所が手掛けた浴室です。

    便所

    北側であり廊下の最奥部に位置するが明るい印象。

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