ランドスケープアーキテクトとは、読んで字のごとく、景観・風景と建築家を組み合わせた言葉です。しかし、彼らの専門領域は、景観のデザインにとどまりません。類語としてランドスケープデザイナー、ランドスケープコンサルタントともいわれるとおり、自然と調和する街づくり、環境デザインにはじまり、河川や海岸、山や森などの自然環境の保全、人と動植物を含む自然が、長く共生する環境を生み出す専門家です。
ランドスケープアーキテクトの仕事は、すでに述べたとおり、驚くほど多様かつ学際的です。広大な土地を活用するためのマスタープランを練ったり、都市部の景観をデザインしたり、自然を再生する事業や、河川や海岸など水辺の美化や防災の整備、公園やスポーツ施設の整備事業などといった公的機関が主導となる事業や、企業や商業施設の緑化アレンジから個人の家の造園プランといった民間の環境デザインまで、幅広く手掛けます。ランドスケープアーキテクトとして活動するには、建築、景観デザインはもちろん、土地利用のための計画、雨水の管理、水辺の浸食保護、環境の保全、動植物・自然の生態系全般の知識、レジャー施設の構想、加えて、歴史や伝統を踏まえた造園技術などについての幅広い知識が求められます。彼らの仕事における最終目標は、自然と人間とが調和し、共存できる環境をデザインし、それを永続的に維持していけるように整備すること。そのため、公共、民間のどちらの事業にも関わる仕事です。
「ランドスケープアーキテクチャー」という言葉は、1828年、ギルバート・レイン・メーソンが初めて使ったと言われる用語です。いわゆるガーデニングという範疇にとどまることなく、周辺の景色や環境、またその地の利用者・用途などにも考慮して空間をデザインすることを目指します。ランドスケープアーキテクトを自称したのは1863年にニューヨークのセントラルパークを設計したフレデリック・L・オルムステッドが最初。それゆえ彼はランドスケープアーキテクチャーの父として知られています。
ヨーロッパの造園の歴史は、古代にまで遡りますが、ルネサンス期までは個人庭園として発展します。政治的権力をアピールする道具として庭園が造られ始めたのがバロックの時代。これがランドスケープアーキテクチャーの前身とされています。よく知られる例は、ヴェルサイユ宮殿の庭園です。
ランドスケープアーキテクチャーというコンセプトが広まる背景しては、産業革命による都市部の拡大と環境の悪化が知られています。工業化に伴い、都市の人口増加と非衛生的な住環境は、人々に自然の尊さを気づかせ、都市計画に自然を取り入れようという機運が高まります。おりしも社会構造・都市構造の変革のとき。人々が気軽に自然と親しむ場を身近に作ること、また悪天候であっても衛生的な街をつくることが求められてきたのです。
日本では、古くから寺社や権力者の邸宅に大小さまざまな庭が作られ、借景や点景といった周辺環境などを活用する技術が利用されてきました。近代以降の都市計画において自然との競争を目指す試みが一般的になったのは20世紀も終わるころ。西側諸国と比べ、まだまだランドスケープアーキテクチャーの専門家の少ない日本ですが、環境問題への意識の変化も伴い、今後さらに広く求められる分野とも言えます。
日本では、ランドスケープアーキテクチャーの専門家の集まりとしてランドスケープコンサルタンツ協会という団体があります。この協会では登録ランドスケープアーキテクトという民間の資格を創設しており、これを取得することにより、ランドスケープアーキテクトとしての職能を示し、活動するができます。また、ランドスケープ経営研究会と呼ばれる集まりは、この協会員が中心となって立ち上げられており、国内外の事業課題やアイデアをリサーチしたり、そのノウハウや意見を交換し合ったり、技術情報の提供を行うなど、さらなる技術の発展を目指しています。
浜松でランドスケープアーキテクトの手を必要とする場面はいろいろありそうですが、ビルの建て込む街の中心部では、屋内や屋上の緑化計画を考える方も多いでしょう。また浜松市内でも緑豊かな地区では、周囲の生態系に配慮して家を建てたいと思われる方もいらっしゃるかもしれません。こうしたケースでは、環境調査などを頼んでみるといいでしょう。自治体や企業、個人のいずれであれ、人と自然のある場に絡む案件があるならば、ランドスケープアーキテクトと相談してみると新しい発見がありそうですね。
ランドスケープアーキテクトによって、造園関係により近い方や建築を主に専門とする専門家もいます。ニーズに合わせた専門家を選んで、依頼してみるとよいでしょう。
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