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待合室 有限会社Y設計室 商業空間 医療機関
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待合室 有限会社Y設計室 商業空間 医療機関

 敷地は幹線道路に並行して引き込まれた4m道路に面している。敷地前面の道路間残余地には、バス停、公設の駐輪場と料金精算機、町内の案内板が置かれ、加えて複数の電柱、外灯、ガードレールなど、実に雑多なモノが並んでこの建物正面に覆いかぶさってくる。また隣には商業ビルの看板や自動販売機類が並び、背後は高台に建つ6階建てのマンションに南と西をふさがれる。この敷地に低層のクリニックを建てれば、その背景は「カラフルなバルコニー」となってしまう。このような景観の中では、建物外壁の色や材料、窓のデザインに凝ったとしても、周囲に埋没するどころか、これまで以上に雑然とした街並みをつくってしまうと思われた。

 そこでここでは、診療機能に応じて必要とされる外窓はすべて建物の裏面にまとめ、正面は開口部の無いシンボリックなファサードとした。外壁の仕上げはあえて単一の素材と色彩を用い、医院建築で多用されるタイルや金属板、打放しコンクリートとガラス、といった素材を並置した「構成」による外観とはしない。目地も無く光沢も無く、極力素材感を出さないことが望ましいと考えた。また2階の大きなガラス面(北東向き)は、グラデーションのついたフィルムを貼ることで、遮光と目隠しの機能を持たせるとともに、全体が白く光る壁面となることを意図した。断面では、1、2層の間に1.5層を挿入し、道路からの視認性を高めるため長く引き伸ばした。

 無開口の壁面と階高の変化により、スケール感も乏しい「白い立体」は、直線と曲線が流動し、見る位置によって様々な表情を見せる。閉じた外壁面とは対照的に、内部には中央にガラス張りのライトコートを設け、安定した外部空間と天空からの十分な採光を確保している。エントランスには、幅も高さも通常のスケールを超えた大庇がかかり、患者を包み込むように迎え入れ円形の中庭へと導く。待合室から中庭を介して診療諸室が見通せることで、患者の安心感と検査や治療へのストレスを和らげる優しい空間づくりを目指した。

用途:診療所 / 構造・規模:鉄筋コンクリート 2階建 / 所在地:福岡市城南区七隈 / 竣工日:2010年4月

クレジット: 撮影:河野博之
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