約130年前（明治初期）に建てられた町屋のリノベーションである。当時はこの建物の他敷地内に4つの倉があり、庄屋を営んでいた。周辺は古くから商家が軒を連ねる町であり、町屋の街並みがわずかに残る地区である。130年の間に様々な使われ方をしてきており、今回は若夫婦の住居として計画が進められた。数回の調査とクライアントからの要望を確認する経過では新築の案も検討されたが、打ち合わせを重ねるごとに、先祖から代々受け継いできた歴史と、街並みの記憶を残すことを最優先とする計画となった。

歴史を刻んだ外皮を基本的にそのままに、内部空間は若夫婦の暮らしと趣味を反映させるため一端スケルトンにした。構造体は、腐食箇所の確認と補修・補強、基礎石は新規土間コンクリートにて周囲を固定、柱と基礎石は土間コンクリートを介して金物にて固定、また、各柱間はぬきにて相互につなぎ、補強を施している。構造の補強・補修計画は、同時に内部の計画へと自然に導かれ、結果この建物の最初の構成に帰化していった。

リノベーションは現代の価値観の表現と技術的な補完だけではなく、建物がもつ基本的な要素を再評価することが重要だと思う。