老朽化した木造二階建の家屋はあきらかに床が傾き、開かない窓もある。
そんな旧邸で、建替計画がスタートしました。
まずは建物が傾いている原因追求からスタートし、軟弱地盤と、宅地を形成する 擁壁に問題があることが判明。 その結果、地盤改良および擁壁のやり直しを前提とした住まいの計画を進めまし た。宅地造成に多くのコストが必要になるため、 建物はローコスト住宅とし、トータルのコストバランスを考慮しながら慎重に設 計を進めました。
施主のSさんの要望は 「和を感じられる」 「プライバシーを確保」 「家族が集まれる場所」 「メンテナンが簡単」 というものです。
敷地は正方形に近い綺麗な形状ですが、方角が南に対して45度振っています。
住宅が密集しながらも、高台になっているため、2階レベルからの眺望はすばら しい環境です。 これらを踏まえ、2階に家族みんなが集まれる場所を設置し、かつ南から降り注ぐ太陽の恩恵を存分に受けるために壁面を南面に配置(敷地単位で は斜めに見える)しました。
敷地や道路に角度を設けることで、周辺住宅との関係を希薄にし、プライバシー 確保にも一役担っています。
2階の南面には杉板と杉格子を施し、質感とある温かみのある仕上げとしました。 木部分を引き立てるため、その他の外壁には黒い色のガルバリウム鋼板を採用し ています。 耐久性の高いガルバリウム鋼板を小波板張りとしました。材料はポピュラーな流 通品ですが、重ね合わせやコーナー部分は役物を使用せず、 板金ならではの曲げ加工で納め、専用のビスではなく、目立ちにくい釘止めを使 用するなど、ディテールを追及することで美しく、オリジ ナリティーのある外観としています。
家族が集まり、くつろぎ、語らう場所が2階のリビングになります。目的がな くても心地よく、皆が自然に集まりコミュニケーションが生ま れる環境を作る ために南側の最も条件の良い場所にリビングを配置し、廻りを取り囲むように キッチン、ダイニング、和室、ワークスペー スを配置しました。
三角形に近い平面形状なので、面積より視覚的に広がりを感じられます。また、 部屋として壁で仕切られていない用途 を、天井の高さと仕上げ材料に変化を付 けることで、空間にメリハリを付けました。 南側の窓は連続した大開口とし、障子を設置することでプライバシーを守りなが ら明るい環境を作ります。 造り付けのソファー・小上がり・和室と、腰をかけられる高さで連続させ、パー スペクティブを付けることで奥行きを 感じられる場所ごとの景色を作りました。