子どもの感性によりそう居場所をつくる
しゃらこども園は、霧島連山の麓にある財部町の中心部に位置する。夏は鹿児島の強い日射が照り、冬には霧島連山から吹く通称「霧島おろし」という寒風にさらされる土地である。ここで幼稚園と保育園を50年運営してきた母体である願成寺は、現代に先駆けて幼保一元化を担ってきたが、老朽化に伴い認定こども園を建設することとなり、これまでの教育を体現する理想的なこども園が命題であった。それには、地域の子育ての核となるシンボル性、幼保連携が実現できる平面計画、厳しい自然環境から室内環境を守る建物性能などが肝要であると考えた。子どもが1日の大半を過ごす園での生活では、さまざまな場面が毎日繰り広げられている。それらの活動を支え、幼児期の健やかな心と体を形成するには、画一的な保育室が機能的に並んだ施設ではなく、子どもが本来持つ探究心と安心への欲求を受け止める多層的な環境が必要である。ここではベースルームとしてイエ型の内向きな内部空間をもつ6M×6Mの保育室を多数点在させ、その間に天井高を抑えつつオープンに広がるフリースペースをおいて、身体感覚の違う空間を対峙させている。保育室は主にまとまりが必要な保育の活動や安心を得ながらのくつろいだ時間を担保し、フリースペースでは、活動的な興味やたくさんの友達と集う行為を支えることを想定している。南には深い軒に覆われた、保育室の凸凹になじむ円弧を描くデッキスペースがあり、建具によりフルオープンにすることができる。園庭と能動的に繋ぎながらも、屋根の高断熱化により木陰のような風が通り抜ける保育空間となる。そして、保育室よりさらに小さいイエ型の内部空間を持つ“えほんのへや”も点在させ、自分の世界で本を読むこともできる。これらの多様性をそのまま外観にあらわし特徴とした。