「住まいの真ん中に小さな庭の大きな歓び」

　二世帯住宅において、家族といえどもプライバシーの確保はやはり配慮が必要なところ。ELDが考えた住宅は、中庭を真ん中にして一階で家族がつながる家だった。程よく世帯ごとで分けられた生活は、プライバシーを守りつつも、家族の存在の空気を感じながら過ごせる調和のとれた暮らしを叶えてくれた。

　間取りは二世帯の家族全員の趣味や暮らしの様子を伺いながら、慎重にプランニングが進められた。一階は施主夫婦のLDKと親夫婦のLDKと寝室、共用の水回りを配慮し、二階には息子夫婦の寝室と子供部屋を置いた。

　リビングでのくつろぐ時間を邪魔しないように、共用の玄関以外に、勝手口をふたつ設け動線への配慮を加えたり、玄関からの土間には、施主が趣味のバイクをいじりながら孫が外で遊ぶ姿を見守れるようにと広いスペースを確保したりと、それぞれの暮らしに合わせて、生活リズムを守りつつ、家族の助け合いが自然に行われるようなプランとした。

　家族全員で暮らす家だからこそ、細部へのこだわりにも施主の思いが込められている。家が明るい雰囲気に包まれるよう、窓は天井いっぱいの高さに持っていくことで、低さを感じさせない工夫をした。屋根の高さに関する近隣住宅への配慮も一生者の家を立てる上では欠かせないこと。そんな中で、中庭の存在の重要性に改めて気づかされることとなった。部屋の内部にまで太陽の光を取り込みつつ、一目を気にすることなく外とのつながりを感じさせてくれる中庭は、特に団地の中という条件の元で大きな効果を担ってくれた。

　家族が同じ空を見上げ、互いを尊重しながら送る、明るく穏やかな生活がここから始まった。