House for Installation, Jun Murata | JAM Jun Murata | JAM ミニマルデザインの リビング 建物,窓,木,フローリング,床,矩形,美術,階段,シーリング,家
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余白空間を彩るインスタレーション

商店街につながる路地裏の一画、築38年の木造住宅の改修計画である。既存建物は、事務所部分とそれに隣接する住宅部分により構成されていた。老朽化した事務所は、醜悪な外観を通りに晒しており、住宅は杜撰な計画により、まとまりのない空間の様相を呈していた。

裁縫家であるクライアントからは、静謐で快適な生活空間に加え、作品創作•展示スペースが要求された。また、通りから見える事務所部分をスタジオとして再利用するため、ファサードの改修が求められた。構造的な変更が困難な中で、空間をいかに緩やかに繋ぎ・隔てるべきか、厳しいコスト条件の中で、新たに開口部を設けることなくいかにして光に満ちた内部空間へと変貌させることができるのかが今回のテーマとなった。

こうした制約の中で、まずは余計な壁を取り払い、導入される自然光の状況を確認することから始まった。旧来の内部は解体され、新たな水回り•収納の機能配置、簡潔で流動的な動線計画と合理的な採光計画が行われた。

まず、中央には平面的にわずかに角度を持たせた壁を配置し、十分な幅を持った通路が配置された。この斜行壁は実際の空間よりもさらに奥行きの深い印象を与える。さらに南面からの柔らかな自然光を絞り込み、奥に進むにつれて徐々にその強度を増幅させてゆく。通路中央には収納コアと同様のディテールの建具が設えられ、キッチンへの裏動線として繋がる。これに直交させるように、勾配が調整された階段が延長しており、回遊性のある動線空間が用意された。

以前、6畳と8畳の和室があった南面部分は、ひとまとまりのスペースへと変換された。そこにリビング•ダイニング•和室を集約させ、様々なパターンの照明計画がなされている。和室部分と矩形の開口で接する狭小スペースは、展示•収納等を兼用させた。ここは以前、床の間と仏間として使われていたスペースである。

隣接する和室部分とは、基壇と小口を鋭角に落とされた袖壁や小壁により仕切られており、その背後に広がる光の矩形は空間に虚空の余白を残している。天井に設けられた各スリットには間接照明•カーテン•引戸が仕込まれており、様々ディテールと見付け幅の決定がされている。また、無窓となるリネン室には、南面からの自然光が射すために、和室との境界壁に縦長のスリットが穿たれている。

空間を構成する要素に対して、極端な差異や違和感を居住者に意識させることを拒んだ。そのため、新旧の境界部分や床、壁•天井を構成するマテリアル相互のディテールは、見切りや目地により最小限且つ適切な処理を行なった。このようなセンシティブな調停が、慎重に吟味されたマテリアルや多様な光の密度を際立たせている。

内部の開き扉は、壁面から独立させた一枚板としている。適度な流通性を確保するため、過剰な気密性や防音性を排除している。周囲の隙間からは、昼夜を通して光や空気が導かれ、風や音が溢れる。そうすることで、白で統一された一見無機質な室相互に、生活の様々な表情や動きを与え、空間をより豊かなものへと変貌させる。

可能な限り慎ましい空間性、そこに残される余白。そのような包容力と可変性を空間に与えたかった。プリミティブな生活の場を提供することが、居住者に多様な選択性をもたらすことができるのではないかと考える。

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