古都北鎌倉に建つギャラリー。クライアントはあけび蔓を山で採り、自然の造形を生かして篭を編む工芸家である。創作活動の一環として、作品発表と販売のためのギャラリーをつくることとなり、この地に白羽の矢が立った。
ここは鎌倉街道から路地を少し入る場所にあり、観光客で賑う街道からも見通しが利く。敷地は奥に土手があり、その上部は北鎌倉駅のホームに隣接するという展示施設には恵まれた場所である。
クライアントからの要望は、鎌倉街道から人々を呼び込むこと、北鎌倉駅に向けて魅せること、そして居住空間を併設してギャラリーからはその気配を感じないように配慮することであった。
街道からのアプローチを考慮すると展示空間は1階の道路側が望ましい。駅に向けるディスプレイは2階の線路側である。私はこれらを別々に設けるのではなく、ひとつの空間となるようにギャラリーを計画したいと考えた。
これを実現するために導かれたのはX型の断面構成を持つゾーニングである。平面を道路側、中間、線路側のそれぞれ左右に6分割し、中間には中庭と吹抜を配した。吹抜はギャラリーと居住空間に分け、それぞれに階段を設けて上下階及び道路側と線路側を繋いでいる。これにより用途の異なる空間をねじらせながら明確に分離することが可能となった。
ギャラリーのエントランスを入ると1階の展示空間の正面に中庭が見える。左の吹抜は奥の壁にハイサイドライトからの光が差し込み、高さのある作品が展示される。階段を上り右に進むと2階の展示空間の左右に視界が広がる。ここは展示空間そのものがディスプレイとなっていて、北鎌倉駅からはこの展示空間越しに中庭に植えた木の枝が風にそよぐ様子まで覗うことができる。
意匠設計/大塚浩子
構造設計/佐藤淳
施工/大同工業株式会社
用途/ギャラリー
構造・規模/RC+S混構造2階建て
所在地/神奈川県
竣工/2004年
写真/市川かおり