築38年、鉄骨2階建共同住宅の2階2戸を個人住宅1戸とする改修計画。
求められたのは多くの個室と、明るさ、広がり、風通しと相反するものだった。合理的な手法で個室を配置するれば、以前の暗く空気の淀んだ空間になってしまう。ここでは一見非合理とも思える手段を選んだ。壁、天井の仕上げを限界まで薄くし、最大気積を確保したうえであえて無駄ともとれるようなスキマを設け、小さな部屋を配置していく。そして、そのスキマを身体スケール、視線、気配などに配慮し緻密に操作することで、スキマは窓になり、縁側になり、路地になり、庭になり、様々な光や影が空間に奥行きを与える。限定された空間内において、数字に現れない広がりを得られないかと考えた住宅。