袋小路となった幅4m道路の「どんつき」が島本町の家の敷地です。
22.67坪の敷地ですが道路に沿って奥の敷地から飛び出た細長い台形部分が6.3坪あり、奥に16.4坪があるというL型形状の狭小変形地です。
しかもその二つの領域は2.6mしか接していないため、敷地なりに建物を建てても1.5m程度しか繋がりません。
構造的な耐震のデメリットを考えると奥の敷地に建物を建て、手前の細長い敷地は駐車場にでもしたいところですが、それでは奥をたとえ3階建てにしても延べ面積が小さすぎるので、建売業者なども手を出せず結果的に売れ残っていた敷地だったのでしょう。
そんな難儀な狭小変形の土地ですが、そのかわり安く購入できたのは事実で、あとは建築家にプランニングとアイデアを出してもらってこの場所に住むのだ、というお施主さんの心意気がこの住宅を生んだといえます。
お施主さんはご夫婦と二人のおチビちゃんたち。 四人家族が暮らすこの小さな住宅は、その変形敷地に沿うように手前と奥に二つの建物があり、奥は道路斜線ギリギリまで大きく計画した3階建て。 手前の細長い建物は奥と半階ズレたスキップフロアの2階建てで、わずか1mの通路部分だけで二つの建物を繋げています。
細長い手前のボリュームは水周りスペースになっており、1.5階となる内部には洗面所・トイレ・脱衣/洗濯・浴室の順に設備が配置されています。 入り口は1mしかありませんが奥にゆくほど巾が広がり、ワンルームに全ての設備を集約したミニマルな空間です。 その下のオープンな1階部分は自転車とストーブの薪置場ですが、スキップフロアで天井が低くなるためお施主さんの頭ギリギリで設定しています。 また屋上は桟橋のようなテラスになっており奥の建物の2.5階から出入りできます。
奥の建物は道路をそのまま延長するように1階に駐車場を設け、その横がエントランスになります。 内部は1階に寝室、2階はLDK、3階は子供部屋と各階がワンルームになっており、オープンな階段で各部屋が繋がっています。 LDKの道路側は道路斜線でカットされた勾配天井の吹抜けになっており、階段を上がった正面に据えた薪ストーブや、正面に聳える天王山を眺めるための大きな窓を設けることで小さいながらも開放感のある空間となっています。
都心部で大きな土地や条件の良い四角い土地を手に入れるのは一苦労です。どうしても狭小や変形な敷地は一般的に敬遠されますが、島本町の家はそんな敷地でもちゃんと建てられるという希望につながる住宅だと思っています。
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用途:専用住宅
規模:木造3階
最高高さ:9.89m
軒高さ:8.50m
敷地面積:74.94㎡(22.67坪)
建築面積:44.75㎡(13.54坪)
延床面積:108.46㎡(32.81坪)
各階床面積
1階:39.78㎡(12.03坪)
2階:44.75㎡(13.54坪)
3階:23.93㎡(7.24坪)
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構造設計:羽田野構造設計室/羽田野裕二
施工:原田工務店
撮影:岡田大次郎