都内の住宅地に建つ住宅です。比較的人通りの多い道に面しているため、建主からの要望である、リビングと一体化したテラスの開放性と、通りからの視線に対するプライバシーの確保をどのように計画するかが設計の主な課題でした。周囲の環境から物理的な距離をとって空間を配置していくことが難しい都市的な状況の中で、隣接して配置された空間の境界を意識的につくることで可変的な関係性を作り出せないだろうかと考えました。
建物は大きな孔のように穿たれた2階のテラスを中心に構成されます。テラスの外壁面には大きな引戸が設けられ、テラスから自由に開閉できます。2層分の高さのテラスはガラス面を介してそのままリビングの吹抜となっているため、引戸が開かれるとリビングは外部へとそのままつながっているような開放的な空間となります。引戸が閉じられると通りや近隣からの視線は完全に遮断され、テラスは空だけが見える壁面に囲まれたコートのような空間になります。引戸を開閉することでテラス空間を挟んで接する外部と内部のつながり方が変化し、外部の内部の新たな関係性が生じます。
3階の寝室はリビングの吹抜と一体の空間となっていて、吹抜との境界にも引戸が設けられています。引戸を閉じれば独立した個室となり、開けば吹き抜けのむこうに空が広がります。
空間の開放的な一体感を保ちつつ、物理的に境界を操作することで近接した空間の関係性が変化し、新たな領域がつくられていくことが感受できるように計画しました。
用途:専用住宅
規模:地上3階
構造:木造
所在地 :東京都目黒区
竣工:2014年1月
Photo by Kai Nakamura