この歯科医院は函館市の中心地にほど近い市電路線沿いの通りに面して建っている。この場所はクライアントの祖父が半世紀の間、外科医院として診療をおこなっていた地で、狭い間口でありながらも奥行きの感じられる魅力的な土地であった。
外観は長い年月愛されてきた 祖父の病院のモチーフであった細長い形状 と ファサードのガラスブロックをデザインとして継承し、新しさの中にも、この地の時間軸を感じられる形態としている。
一方、内観は歯科医院を感じさせたくないというクライアントの思いから居心地の良い、くつろげる空間を目指した。
患者さんはファサードの光り輝くガラスブロックを眺めながらエントランスのゲートに誘われ、奥にミドリを感じて、扉を開ける。
待合は、先生の大好きな植物や小物達に囲まれ、あたかもリビングのようなインテリアで、ゆっくりとした時間の流れを感じていただけると思う。
診療室への引戸を開けると、カウンセリングコーナーを横目に、スタッフと患者さんとの会話を引き出すよなコミュニケーションロードと呼ばれる通路が展開し、中庭には天窓から柔らかい光が降り注ぐ。
診療室は高窓からの自然光と光の壁の間接照明に彩られ、木とモルタルという素材感のある空間を柔らかく演出している。
診療への誘いは、路地を散歩して、景色がシークエンスに映り込んでくる、ある種、物語性のある空間に仕上がったと感じている。
光の行灯のようなこの建物が、祖父から続いている医療のアカリを灯し続けて、先生とスタッフと患者さんのコミュニケーションの場所として、地域に根付いていく事を期待してる。