西川口キリスト教会, 西島正樹/プライム一級建築士事務所 西島正樹/プライム一級建築士事務所 商業空間 イベント会場
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 「祈る人間の内面と呼応する礼拝堂空間とは何か。」2008年春に行われた教会堂建て替えの公開設計競技において、この問いへの答えとして生まれた案は、応募85作品の中から最優秀に選ばれました。そして完成したのがこの建築です。

 人は祈るとき、自分の心の中へと意識を向ける。祈りの空間が確かに守られているという安心を感じられてこそ、人はより深く内面へと向かうことができるのではないでしょうか。同時に祈りの空間は、向き合った内面をより大きな世界へと解き放つ場です。この祈りの空間に必要な2つ、「包み込む」特性と「解き放つ」特性とを合わせ持つ空間として、正三角形の各辺をふくらませた平面形を持つ礼拝堂空間を考えだしました。三角形のひとつの頂点を入口にすると、入口は門のように絞られるため、確かな安心を感じることができます。中に入ると奥にいくほど末広がりとなり、心が解放されていきます。手のひらで大切なものを包み込むように3辺の壁を円弧状にふくらませ、外から内を守る確かな存在となるようにコンクリート打ち放しの壁にしました。この堅固な壁の上に鉄骨と木造で屋根を架け、心が解き放たれるような軽やかさを生み出しました。屋根は3辺の壁と対応して3枚に分け、屋根と屋根の間から入る自然光によって、壁で包まれた礼拝堂全体を穏やかな光で満たしました。正面聖壇の壁に十字の開口を開け、光が十字架を描き出すことで、さらに大きな世界へと心が向かうようにしました。

 建築の中心となるこの礼拝堂を2階にすえました。この階全体を祈りの空間と位置づけ、祈とう室も2階に配置しました。祈とう室は礼拝堂の正三角形と呼応して六角形平面にすることで、礼拝堂とともに他の空間から際立つようにしました。また、礼拝堂と祈とう室の間のロビーは、木造の屋根をそのまま室内に生かし、祈りに向かう場にふさわしい落ち着きある空間にしました。

 一方1階は、様々な教会活動のための場として、大きな一室の空間を引戸で分割することで、食事、日曜学校など多様な教会活動に柔軟に応えるようにしました。日頃の活動が外からも感じ取れるように、道路側をガラス張りにして、道路から1階室内を通して奥の庭までが見通せるような開放感を生み出しました。

 1階から祈りの空間である2階へとあがる階段の位置は、道路からよく見えるように、玄関に連続して配置しました。まちから礼拝堂に至る道筋がわかってこそ、祈りの場に向かう思いは途切れることなく深まります。そして初めての人にとって、教会堂へと一歩を踏み出す気持ちに結びつくのではないでしょうか。

 外観は、特徴ある礼拝堂の形をまちに対して明確に示すため、礼拝堂を道路側前面に配置しました。宙に浮いた大きな礼拝堂の壁が、まちに向かってふくらむようにはり出す姿から、祈りの空間がまちへと語りかけるような佇まいが生まれればと考えました。

 祈る人間の内面と呼応する空間をめざしたこの建築の中で、人々の内面がより深く豊かに育まれることを願っています。

色: 木目調
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4.5

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