最小限の都市
住宅密集地に建つ中庭を囲んだ二世帯住宅。家族が時には距離をとり、時には親密に集う、最
小限の都市を目指した。中庭には塔が建ち、ウッドデッキは植栽にかき込まれ路地のようにも
見える。訪れる人たちは「まちかど」のようだと言う。都市では他者のまなざしが緊密すぎる
関係に程よい開放感を与えるが、二世帯住宅においてもそのような他者性の存在が程よい緩衝
になるのではと考えた。中庭の塔やその窓は仮想的ではあるが他者の存在を暗示させる存在で
ある。
共用エントランスから直接アクセスできる中庭は共有のリビングでもある。気候の良いときの
ここでのパーティーは贅沢だ。中庭がプライベート空間の手前でアクセスできることで人を招
き入れ易くしている。外の人に対して開かれていることも二世帯住宅で住人の関係性に潤いを
与える要素になるだろう。
同時に、このような性質をもつことで住宅は社会に対して適切な関係性をもった都市の要素に
なれると考えた。
〈物件名〉まちかどのある家
〈所在地〉東京都大田区山王3-17-8
〈居住者構成〉親世帯:夫婦
上2階
〈主要構造〉木造
〈敷地面積〉187.98㎡
〈建築面積〉108.85 ㎡
〈各階床面積〉108.85㎡(1階) 102.18 ㎡(2
階) 3.74㎡(塔屋)
〈延床面積〉214.50㎡
〈建蔽率〉
150%)
〈設計〉SPEAC,inc. 宮部浩幸
〈構造設計〉長坂設計工舍
〈施工〉小川建設
〈写真〉太田拓実(TAKUMI OTA)
〈設計期間〉 2011.07-2012.03
〈工事期間〉