PHOTO:Daici Ano
作家である御主人と、一緒に仕事をする奥様、そして子供二人が暮らす仕事場
を併設した住宅である。
敷地は閑静な住宅街にあり、周囲にできるだけ圧迫感を与えないよう、小さな
切妻屋根が連なる形式とした。
また、仕事場と生活の場が出来るだけ距離感を持ち、また動線距離を生むため
にも平面計画は中庭形式とした。
建物の内部には、豊富な蔵書を楽しむ読書部屋、奥様の作業部屋など、役割を
細分化した結果生まれた、通常の住まいにはない小部屋が多くある。また寝室
や子供部屋など、サイズを圧縮することで小部屋化したものもある。それらは
、その小部屋と、その外まで含めた時に使い方が充実してくるような役割の持
たせ方になっている。
これらの小部屋を建物内に配していくに際し、我々は小部屋の配置が生み出す
構成と、外形がもたらす室内形状、そして在来木造による構造体という三つの
要素と向き合うこととした。
具体的には、構成や外形、構造のどれかに明確な主導権を引き渡すのではなく
、むしろ場面ごとに主役が切り替わっていくような、主従関係の揺らぎが動的
に体感されるような場を創りだすことを考えた。
その結果、ゆるやかに連続する場の中にあって、ある場所では小部屋の構成に
よる空間の立体感を強く感じたり、別の場所では立ち現れた構造柱が空間に思
わぬ効果をもたらしていたり、あるいは屋根形状を生かした屋根架構を強く感
じる場が現れたりと、構成、外形、構造という三要素が次々と濃淡を変化させ
る場が出来上がった。
建築を扱う思考において、単純な統合、帰結をもたせないことで生まれる豊か
さを手にできればと考えた。
作品タイトル house I
設計 日吉坂事務所
施工 株式会社 青
住所 東京都武蔵野市
作品タイトル(英文表記)
設計者名(英文表記) Office Hiyoshizaka