泉町の家, 鈴木光雄建築工房 鈴木光雄建築工房 植物,建物,窓,空,雲,木,シェード,家,ドア,木
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 50歳代半ばのご夫婦が老後を見据えて建てた住宅である。 市の中心部から少し外れた古い集落に建つ。集落の民家は密集せず、適度な距離を保って建っている。裏山には鎮守の森、昔ながらの雰囲気を残す集落である。庭にはご夫妻の植えた四季折々の花が咲き、虫の音が聞こえる。敷地を訪れてクライアント夫妻と話をしていると、ゆったりとした時間が流れるような感じで、どこか懐かしさを覚えた。散歩をする近所の人が気軽に立ち寄っておしゃべりをする。ご近所同士の結びつきが強い地域でもある。昔から続くその流れを断ち切らないで、この情景を持続したいと感じた。さりげなくそこに建っていて、主張し過ぎない存在感を持つ。そして周囲と密に繋がる家にしたいと考えた。  景観に溶け込むように、外観はシンプルな切妻で全体を低めに設定した。南側は、外部とダイナミックに繋がる掃出しの連窓とした。そこに軒を深く出して軒下に濡れ縁を設けた。深い軒に守られたその空間が近所の人との交流の場になっている。 内部は家の中心に居間を配置、その周囲に和室・寝室・家事室・洗面を配置した。各所に居間から直接アクセスでき、シンプルな動線で使いやすい。 「公」と「私」のメリハリ 公的な場である居間と和室は、構造をアラワシにして、間仕切り壁の上部をガラス張りとすることで大きなひとつ屋根の下に居るような広がりのある晴れやかな場とした。居間の中に出っ張るような平面形状をしている廊下・トイレの塊を居間の大きな空間の中に「入れ子状」に置き、より広がりを感じさせている。私的な場である寝室・洗面・浴室は、天井をフラットにして低く抑え、落ち着きのある場とした。 竣工から数年が経ち、使い込まれて趣を増したこの家は、周囲の豊かな自然にすっかり溶け込み、夫妻の生活がゆったりと紡がれている。 写真:加斗タカオ

クレジット: 加斗タカオ
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