正面に長谷の尾根が鬱蒼とした雑木に覆われて切立ち、目に優しい緑の壁に囲まれている敷地に、谷戸の地形や自然との結びつきを身近に感じる計画にしたいと考えた。

　造成された敷地が道路レベル（駐車スペース）と、道路レベルより下に2ｍの平地と2段構成になっているため、駐車スペースから水平に階段踊り場を兼ねた玄関へアプローチし、半階ずつスキップさせた断面計画がプラン全体を導いている。

　居間・食堂と台所をひとまとまりにして2階に設け、周辺の遠景が入り込みやすい高さに生活の中心を据えた。食堂に向けて手元の隠れる台所に立つと、2階の殆どの場所の気配を覗うことができる。手を休める間に、明るさを抑えた室内から窓に映る遠景に視線を誘う、陰影を湛えた住まいを目指した。