愛知県犬山市内、木曽街道近くの田圃のなかに建つ住宅です。
ご夫婦と息子さんの3人家族の住まいとして、「佇まいは控えめなイメージ、でも他にはない建築を」とご希望をいただきました。
建築の構成は、木造平屋建て、機能的でシンプルな平面とし、中央にはコモンシェルフと名付けた東西に伸びる大きな壁面収納を設けています。これに沿う約13mの奥行きを持つメインの居住スペースでは特に、家族の気配、光と風が自然と感じられる おおらかな空間のつくりを目指しました。その一部をご夫婦の趣味である自転車をメンテナンスできる土間室とし、また室内動線を路地のような設えとしたことで、かつてこの地域の町家にみられたコンテクストにも呼応するような(住宅内部に少しだけパブリックなスペースを感じる)イメージがつくられました。
外装は、木板張り(レッドシダー)壁面とガルバリウム鋼板屋根の2要素にまとめましたが、木の経年変化によって やがて屋根のシルバーグレー色へ馴染んでいくことを想定しています。
また軒高を低めに設定し、地域に古くからある建築スケールのような控え目な佇まいに近づけようと考えました。そのほか建築の造形的には、建築の対称性を僅かに崩すような角度の操作を加えていくことで、建築の持つ厳格さをやわらげ、優しく風景に溶け込ませながら独自の存在感を生み出そうと試みました。
普通のものを普通に用いて、「控えめなのにどこか普通でない建築」が創り出せたのなら、依頼主様と私たち設計者、施工者の想いが良い形で実現できたと言えそうです。
photo:Shigeo Ogawa