北海道札幌市の郊外に計画されたこの二世帯住宅は、オーナーの希望によりRC壁式外断熱サンドイッチ工法による内部打放しコンクリート仕上げである。建物の3/4は曲面に、1/4の欠け部分には既存の日本庭園を抱え込みながら、前方に手稲の山々を取りこむことができるようにプランされている。先祖代々より慣れ親しんだこれらの風景を見ながら生活が送れるようにとの希望をかたちにしたものであり、これは同時に大型の住宅でありながら各部屋が窓越しに見渡せる効果もある。3/4の曲面部の外周部分には廊下をとり、曲面をなぞりながら各部屋にアプローチしてゆくことにより、二世帯住宅の平面計画で重要とされる世帯間のプライバシーを出来る限り確保したものとなっている。曲面壁の総長はおよそ50mで、この住宅はその壁に包まれ十分なプライバシーの保護と開放感に満たされた生活が送られている。またこのような住宅で懸念されるのは光熱費であり、特に冬場のコストをいかに抑えるかが検討された。結果的には熱容量が十分に期待できるコンクリート躯体があることを見込み、スラブに電気蓄熱式床暖房を全面に敷設している。また外部のソーラーパネルにより発電も行っており、昼間の電力を電力会社に売却することにより、通年計画で経費のバランスをとっている。石狩湾からの冬の風を素直に流し、夏の日差しをくいとめる大きな曲面壁は自然条件に応じて閉じる部分と開く部分を決定することにより室内環境を保護すると同時に建物全体におおらかさを与えている。