この住宅は函館市の閑静な住宅地にある。東側が前面道路になっており、敷地の奥になる西側は由緒ある女子校の敷地となっておりその学校林に面して豊かな緑を享受している。この住宅の設計条件は車寄せのキャノピーとプライバシーを守るための中庭を盛り込む事であった。敷地の間口は当初、現在の半分強であったが計画中に隣地を入手して現在の状態となり、車寄せは通り抜け可能な設計となった。この車寄せの中にメインエントランスが有り、アプローチはエントランスを入ると右に住居棟と左に車庫棟を結ぶパサージュとなっている。車庫棟から中庭の縁にある外部通路を通ってゲストルームへとアプローチして行くが、そこは屋根がかけられた回廊となり順光で庭を見せている。母屋は基本的には敷地の西側から北側にかけてL型のプランとなっており、中庭を中心に東側に車寄せ南側には車庫棟を配置してそれらは低層とし中庭に十分な日差しを確保しかつプライバシーを守っている。内部プランは1階にLDKと和室そしてゲストルームと大きく３つのゾーニングに分け中庭を囲み配置されている。それに沿う様に縁側デッキを配しそこに片持ち２メートルの庇を設けた。これは南面のLDK部分の長さ約１１メートルに及ぶ開口の日射制御と雨時の開口を開いての通風を可能にしている。また、この建物は外断熱で施工されているため、庇と躯体との接続にイソコルブを採用して熱伝導絶縁処理を行っている。これらにより住宅のエネルギーロスを出来るだけ制御し、快適な室内環境が実現している。この住宅の設計はオーナーの要望や趣味を十分に理解した上で進められており、そこに設計者がどのように介入してトータルにまとめてゆくかであった。結果的におおらかでゆとりある住宅となり、さらに質実剛健なプランニングや素材の選択により揺るぎない安定感を感じるモダンリビングが実現している。