愛媛県今治市の山間に建つ寺務所及び庫裡の計画である。建物外周は最大700mmある極厚の壁で、いくつかの方向に開けられた開口により、様々な効果を持たせている。日々訪れる参拝者からのプライバシーを確保しながら天空光を求める開口は上向きになり、夏の直射日光を遮りながら冬の陽光を求めるものは南向きになる。天井面より上にぬける開口からは高低差換気により空気の排気が促進され、室内に気流を作り出す。参拝者の動線、本堂の配置、山の佇まい、そして陽光の動きなど、スケールの異なる対象物と生活の位置関係を確かめながら、各開口の傾きを決定した。また、外装材はメーカーの協力を仰ぎ、地元で有名な大島石の粒を混ぜ込んだものを使用している。粒度の良い石を手に入れるため、ワークショップで石を砕き、左官材に使用した。既成品では得難いムラをつくり、参加者が建物への愛着も深めるきっかけになったように思う。
[物件データ]
所在地: 愛媛県今治市
用途:寺務所及び庫裏(住宅)
工事種別:新築
竣工:2012年10月
構造:RC造
規模:地上3階建
敷地面積:1,922.14m2
建築面積:75.37m2
延床面積:184.61m2
最高高さ:10,200mm
建主:宗教法人栄福寺
構造:tmsd萬田隆構造設計事務所
設備:環境エンジニアリング
照明:シリウスライティングオフィス
施工:竹中工務店四国支店