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5pm in the summer, KEISUKE FUJIWARA DESIGN OFFICE KEISUKE FUJIWARA DESIGN OFFICE その他のスペース その他アート作品
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この椅子をデザインする上で気に掛けたことは、凛とした品格のある後ろ姿の美しい椅子にすることでした。ここで用いたチタニウムの陽極酸化とは、素材そのものの表面を酸化させることです。つまり、電気を通し強制的に錆びさせることで、化学的に酸化膜をつくる処理のことを言います。酸化膜は屈折率の高い透明な皮膜をしていますが、この皮膜がプリズムの役割を果たして光を屈折させることになります。また、酸化膜の厚みにより光の屈折率が変わり、光が干渉し合い、あたかも着色されたかのように見ることができるのです。
チタニウムは強度、軽さ、耐食性、耐熱性を備え、今では様々な分野で活用されています。以前は、ジェット機や人工衛星の機材用として使用されることが多かったようですが、近年は「人体に害を与えない」などの特性が研究によって見いだされ、医療分野にも使われることが増えてきたようです。

陽極酸化によって、他の素材では表現できない淡い色彩構成を施したこの椅子は、素材の特性を活かした色彩と製作工程が特徴的なデザインです。椅子のタイトルにも用いていますが、夏の夕暮れ時をイメージしたものになっています。

この椅子の制作現場では、まず陽極酸化の施される前の下処理が行われました。まず、一次的な処理として、チタニウムの表面に残っている加工時の指紋などの不必要な皮膜などを除去します。このようにして清浄な表面を得た後に、電解液に浸して陽極酸化させます。電解液に浸し、電圧を変化させながら椅子本体を引き出すと、電圧の違いにより酸化被膜の厚みに違いが生まれます。このことが発色の違いを生むことになります。

 二〇〇一年に始まったこのプロジェクトにおいて、二〇〇七年までの間に、チタニウムの陽極酸化シリーズとして、五種類の椅子と二種類のテーブルをつくりました。毎年一種類ずつつくったことになります。二〇〇七年には、ミラノサローネの期間中、展覧会を開催することになりました。これを機に、その年の一二月に開かれるデザインマイアミで作品発表の機会を得ることになり、また翌二〇〇八年にはコルトレイク国際家具デザインビエンナーレへの招聘へつながることになりました。 

原形となったダイニングチェアが空間に溶け込むことを意識した椅子ならば、チタニウム材でつくったこの椅子は、空間の中では存在感を示す椅子となります。椅子の置かれる「場」の関係性から椅子を見るならば、まさに対極に位置するものと言うことができるでしょう。

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