「地の声を聞き、天の意に添う　建物を造りなさい。」

師のことばを旨に建築をしてきました。

モロッコスタイルの家について

　日本の文化はシルクロードを通して、いろいろなものが東方東漸し 長い時間をかけて日本に到達し、ここで熟成してゆきました。

　遠くはアフリカからヨーロッパ、東アジア、インド、中国とすべての地域の 文化が伝わってきています。日本建築も多くの文化の要素を必要に応じて熟成させてきました。

アジアの全ての文化を内包しているのが日本建築なのです。

　それを元に21世紀の和の建築をめざしたのがモロッコスタイルの家でした。 奇しくもイスラムが世界的に注目され始める頃に企画が始まりました。

　コンクリートと木造に精通し両方の良いところを融合させて 新しいディティールと工法を造り出すこと、木造もコンクリートも 意識すること無く当たり前のように新しい和風にすること。

　それはコンクリートを土壁と考え、タイルを瓦や日干しレンガの進化したものとし、 寸法やサイズは19世紀の日本建築のモディユールを使い、 建物高さも地域の和風建築を超えることが無いようにしました。 古くからの町並みの中で調和し、地域の歴史を尊重し その場のたたずまいを高めるために。

　ディティールもこの建物のために新たに開発しました。 コンクリートと木梁の接合部や枠の無い一枚板の玄関扉は今までに 見たことの無い美しいディティールです。

やっとコンクリートと木造が融合できる時を迎えたのです。

　家主は住み始めてから家造りに目覚め、毎年少しずつ進化させています。 自作のシャンデリアが入り庇を付け、照明を造り、 ママ友と子供たちが集まるキッズルームを造り、薪ストーブを入れと どんどん美しさと暮らしやすさが増しています。

「まるでアートの中で暮らしているようです。」

印象に残っている家主の言葉です。

お施主と共に造り上げるスタイルを取ってきた我々には 嬉しい言葉でした。