エントランスその2 伊波一哉建築設計室 商業空間 鉄/鋼 オフィスビル
エントランスその2 伊波一哉建築設計室 商業空間 鉄/鋼 オフィスビル

施主の要求は伏見稲荷のモチーフと、自然光が多く且つ夏季にACを必要としない工場でした。また隣接する住宅地に対して、閉ざすことで威圧感を与えたり開放し過ぎてプライバシーを侵すことのない様な配慮が必要でした。日本にはその解決に相応しい伝統的手法がありますが、この施設は文化の異なる外国人も利用するため、其々の背景に引き寄せてこの施設を受け止めて貰える様に、直截的表現を避けデザインの抽象化に努めました。

中庭の目的の一つは通風採光のために工場の東面に大開口を設けることですが、比較的よく吹く西寄りの風を、夏は開放している透光性のあるシャッターから取り入れ、全ての壁面の大開口から排気する計画をしています。また日射を軽減するため売電用太陽光パネルを工場の屋上に設け、南と西側には舗装の上に深い庇を設けています。そして、この庇下の空間は工場より一段低くして柱と竪樋による列柱で構成し、南側の生活道路に対する干渉帯も兼ねています。一方東側の住宅地に対しては、2階の窓に有孔折板を設け、1階では従業員の様子を敢えて見せつつ、法面を活かした植栽帯で人の出入りがないことを可視化し開放性と閉鎖性の調和を図りました。列柱は多くの文化に見られる建築要素ですが、ここでも抽象化を心がけ、施主は伏見稲荷と解しまたある人は外国の風景を連想したとのことです。

私は日本的なものづくりの思想でできた施設の中でドイツのものづくりシステムを機能させ、共にものづくりを得意とする二つの文化の調和を試みましたが、建築家ができることの一つは造形の背後にある思想を顕在化させることだとも考えています。この設計を通じ、日本的なものづくりの肝である、あるものの特徴を理解し最小限で効果的な工夫を施すことを顕在化させ提起することを目論みました。

これに基づき、ありふれた材料の通常は見られない効果を引き出すように努めました。用途上不可避な長大な壁面の肝は継ぎ目のコントロールにあると認識し意図的に細かく分割し面を構成しました。また色彩は、ドイツと日本の国旗及びコーポレートカラーを一度分解しアクセントカラーとして再構成し、それを活かすための背景に配慮しました。汚れが目立たず落ち着いた濃灰色は背景に適していますが一方では威圧的にもなりえます。そこで光の加減で白いフィルターのように作用することを狙い、五分艶の塗料をできるだけ細かい粒で吹き付けました。

色: オレンジ
素材: 鉄/鋼
全長: 66 m
幅: 118 m
高さ: 10.3 m
面積: 5480 m²
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4.5

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