COUMA+house H, 吉村寿博建築設計事務所 吉村寿博建築設計事務所 モダンスタイルの 玄関&廊下&階段
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様々な環境を内包した職住を繋ぐ回遊性

金沢市郊外にある新しく区画整理された住宅地の一角に建つ美容院兼住宅である。敷地は比較的大きな区画の長方形で、南側に景観のよい公園が広がっている。屋根面積の 3分の2を 2 寸勾配以上とし、外壁の色も一定の範囲に規制される地区計画によって景観が規制されているせいか、周囲には似た雰囲気を持つ住宅が建ち並んでいる。建主から求められたのは、仕事に集中できる環境、ギャラリーのような美容院、温熱環境の観点から大きな空間は好まないというものだった。スタディの過程では、美容院と住宅の関係性を徹底的に検討した。南側の一面接道の敷地であるため、アプローチはおのずと南に限定される。将来、敷地西側にも建物が建つことを考慮すると、採光や通風も公園のある南側からとなり、短辺側である南面に依存する部分が大きい。奥行きの深い敷地形状ゆえ南面配置できる部屋は限られ、部屋によって環境が大きく偏ることになる。この南面依存を和らげるべく平面構成を面的に捉えつつ、多方向に展開する変形中庭を介してさまざまな環境を内包し、移動空間も含めた全ての場所から多様な空間を感じられるような回遊性を得ることができないかと模索した。公園と住宅の間にある美容院は、ファサードの大きな開口部によって公園と住宅を繋いでいる。カットスペースは正面から見えないように配置され、施術を受けている間、鏡に映り込んだ中庭によって空間に広がりが感じられる。他人から干渉されることのない、客との対話が弾むプライペートな空間である。住宅への採光に配慮して美容院の床を 40cm 下げることで、より落ち着きのある場所となった。

住宅の玄関扉を開けると、住宅側に回り込んだ中庭が家族を迎え、中庭に添って歩くとダイニングキッチンに繋がる。ここは、この家の中心でもあり、いろいろな場所と接点を持てる空間である。2階からは街と繋がる視点を持つことができる。美容院、芝生面、住宅1,2階と4つの異なるレベルが、断面的にも豊かな空間をつくり出し、美容院、住宅、公園、街など、建物内を巡ることでさまざまな視点を得られる建物となった。道路からセットバックして建ち並ぶ住宅街の中、その中間地点に置かれた職の場が、美容院の利用者だけでなく道を歩く人や公園で遊ぶ子供を惹きつける。街との新しい関わり方を持つファサードが、新しい風景をつくりだしている。

クレジット: hiraku ikeda
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