セタガヤの家, シキナミカズヤ建築研究所 シキナミカズヤ建築研究所 モダンスタイルの寝室
セタガヤの家, シキナミカズヤ建築研究所 シキナミカズヤ建築研究所 モダンスタイルの寝室

敷地は閑静な住宅街の中にあり、近隣には大きな緑地が点在している。敷地の南側にも緑地の一部として残っていた小さな雑木林があり、それはうっそうとしながらもどこか魅力的であった。しかし、その雑木林のある場所は、設計当初から宅地化されることが決まっており、隣地住宅の建設が計画されていた。とはいえ、目の前にある雑木林を無いものとして、それが残っていた頃の環境を無視して設計することに違和感があった。そうした経緯から、雑木林を敷地の中に植え替える事を考えてみたのがこの計画の始まりである。それは、今後開発が進み近似した住宅が建ち並ぶであろうこの地域の中で、かつての記憶をこの建物に染み込ませる、そんなイメージでもあった。敷地形状は、間口6.5m奥行き14mの東西に細長い敷地である。まず、敷地境界線からナナメに建物をセットバックさせ、駐車1台分のスペースと奥行きの違う庭となるスペースを作った。次に、この場所に同じく奥行きの違う大きく深い庇を計画した。庇はできるだけ低く伸ばすことで、庭と室内が連続するような包容感のある場所となる。外部によって切り取られた台形状のプランでは、各部屋を南面させつつ1列に配置した。その構成は玄関ーキッチンーダイニングーリビング、2Fはへと続き子供室ー水廻りークローゼットー寝室 という、帰宅から外出までの一日の生活の流れが一筆書きでなぞれるような動線計画となっている。1Fの室内空間は玄関から奥に進むに従って幅が広がっていき、それに比例して庭に対して開口が大きくなっている。目線の高さまで垂れ下がった庇が室内と角度を変えて落ちることにより、庭の景色と隣地との距離感を意識させている。2Fでは、庇と連動して空に向かっている角度を持った壁がトップライトとして機能している。1Fにおける露出する木梁や2Fでの廊下の枠形状は、このような空間の方向性を意識させるためのものである。つまり、南北方向は外部を意識する仕掛けを設けることで短いながらも奥行きを感じる空間をつくり、東西方向は各用途の空間を連続させることでワンルームのような空間となっている。台形のプランと奥行きの違う庇によって出来た多くの不整形な箇所は、隙間を残すようにあいまいに処理している。それらは設計における余白として、空間にゆとりと更なる奥行きを感じさせている。建物が完成した現在、垂れ下がる庇の大きな開口からは、隣地環境が変わった今も室内へ日差しを落とし続けている。庭の木々は成長して庇に絡みつき、今後さらに建物と一体化していくだろう。足元にはコケが生え、庭に落ちる影の部分を演出してくれる予定である。あの雑木林は、跡形も無く伐採され、その場所には住宅が建ち並んでいるが、この住宅はそんな周囲の環境に左右されず“再び“時間を刻んでいくはずである。

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4.5

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