長屋とは、江戸時代から続くような古い木造の建物をまず思い浮かべる方も多いと思います。近年、新しいものはもちろん、古くからあるものを、元々の良さを活かしつつ、新しく住みやすい住まいへと長屋をリノベーションする動きも盛んになっています。そこで今回は、長屋とはそもそもどういうものなのか、そしてその特徴や魅力について、実際の長屋リノベーションなどの例とともに紹介していきたいと思います。
長屋とは、複数戸が1つの建物の中で壁を共有する形で構成される集合住宅です。長屋集合住宅に特徴的なのは、それぞれの住戸が1つ1つ個別に直接外へとつながる玄関やアプローチを持っていることです。江戸時代においては、平屋の長屋が主流でしたが、その後は2階建て以上のものがほとんどです。昔の長屋集合住宅は狭くて暗いという印象でしたが、こちらの森建築設計が手掛けた賃貸長屋のように、それぞれの住戸にパティオやロフトが設けられるなど、今では現代の暮らしに合った快適な室内空間が実現されています。
▶「住まいの写真」ページでは様々な種類の家の外観を紹介しています。◀
※ 家の外観の写真ページ
長屋集合住宅は複数の住戸が1つの建物内に構成されることから、共同住宅と思われるかもしれません。しかし、2つは厳密には異なり、個別の玄関を持つ、つまりすべての住戸が直接道路につながる長屋に対して、共同住宅は、共用の廊下や階段を通して各住戸に入っていくかたちになります。それにより、各都道府県の条例において、特殊建築物となる共同住宅は、耐火建築物にする必要など、長屋よりも様々な制約が課せられることになります。
◆homifyには多くの建築家や住まいの専門家が登録しています。専門家のリストから希望の専門家を見つけましょう!◆
長屋集合住宅は左右に住戸が隣り合い、2面の壁を共有し、その面には開口が開けられなかったことから、長屋の室内はどうしても暗く、また狭い室内空間が多数でした。しかし、現在の新築の長屋集合住宅は複数階で開放的な室内となっています。また長屋リノベーションにおいては、こちらのように天窓を設けることで室内に光を落としながら、長細い空間の魅力を活かして壁が視線の邪魔にならないシンプルで奥行きを感じられる室内空間となっています。天窓については、「愛犬と暮らす天窓のある家」でも紹介しています。
写真:鈴木研一
【住まいづくりついては、こちらの記事でも紹介しています】
先に述べたように、長屋集合住宅は共同住宅に比べて法規的な様々な制約が緩いことから建設費用を抑えられるということにも関わってきます。それは賃貸料の安さにもつながります。既存の長屋集合住宅を改修する場合でも、築年数の古い建物が多く、それゆえ空き家率も高く、物価が安くなっていることが多くみられることから、うまく長屋リノベーションをすることで経済的にも空間的にも非常に魅力的な建物となるでしょう。
写真:すぎのk
海外のテラスハウスの意味は長屋形式同様です。英語圏では、テラスハウス(terrace house)、あるいはタウンハウス(townhouse)と呼ばれます。テラスハウスの意味は日本のものと違い、昔からほとんどが複数階で広さも大きく、庭付きとなっています。日本でも戦後以降、テラスハウスやタウンハウスと名付けられて、多くの団地が建設されましたが、近年再びその良さが見直され、様々な取り組みが見られます。
【和の伝統的な空間については、こちらの記事も紹介しています】
◆homifyには多くの建築家や住まいの専門家が登録しています。専門家のリストから希望の専門家を見つけましょう!◆
テラスハウスの意味はやはり家族世帯をイメージした住居である点です。こちらのテラスハウスは、小さいお子さんがいる家族にとって優しい住宅です。こどもと暮らしやすい家は誰にとっても暮らしやすい家であるでしょう。特に子供達が安心して遊べる共有の中庭空間がポイントです。
All photos by Asaco Suzuki
テラスハウスの意味は、長屋同様一戸建て感覚で生活できる点にあります。こちらのテラスハウスはさらに中庭、各戸にも前庭とルーフバルコニーがあり、豊かな屋外プライベート空間のある賃貸集合住宅です。開放的な共用空間とプライベート空間が重ならないように配慮されているので、プライバシーや防音に配慮されています。