シンプルな家こそ丁寧に豊かに暮らせる、どの世代にもそんな考えを持つ人が増えてきたように思えます。クオリティの良いモノを大事に長く使うという姿勢はもちろん建築にも向けられるべきであり、そのためには時間と共に味わいを増し、唯一無二のものになる家が求められます。自然に囲まれ景色の良い立地に家を建てるとなるとその恵まれた環境を十分に生かすべく自ずと建築物は開放的かつシンプルになるのではないでしょうか。そんな家づくりを得意とするZOYA DESIGN OFFICEの手がけた住宅を紹介したいと思います。
雄大な山々と田畑ののんびりとした風景が広がる200坪ほどのゆったりとした敷地に建てられたラスティックな雰囲気の住宅。切り妻屋根にはあえて軒の出を設けず、シンプルな仕上がりを強調しています。その代わり、1階の南東側に奥行きの深い庇を設け、多目的に使用できるアウトドア空間を形成しています。
建物の規模に対してかなり大きめの敷地の外部空間は時間をかけて植栽を加え、心安らぐ家を築いていくとのこと。黒色の杉板張りの外壁はシャープな印象を与えますが、素材自体が木なのでどこかほっとする暖かみも持ち合わせているので、大都市でものどかな地方でもしっくりきますね。軒天はナチュラルな色合いの木を採用。夏には暑い日差しを程よく遮り木陰を作ってくれ、冬の時期は室内の奥まで暖かい太陽の光を届けてくれる庇に覆われた軒下空間は大いに活用できそうですね。
内部を見てみましょう。なんと1階の南側半分の床はモルタルで仕上げた土間になっているんです。そして北側の境界壁からも十分な距離を取り、冬でも安定した明るさを保てる場所に段差のある和室や階段ホールを含むフリースペースなど居室を配置しています。間仕切りを極力減らし、家全体が開放的な空間になるように意識したデザイン、気持ちが良いですよね。
ラスティックな土間のリビングから南側を見たところです。大きな開口からは素晴らしい眺めが一望でき、借景となって内部空間を贅沢に演出してくれます。無駄のないシンプルな住宅だからこそ周囲の環境を十分に享受することで暮らし自体を豊かにすることができるのではないでしょうか。開口を開ければモルタル仕上げの土間と軒下空間のテラスが一体化し、内外の融け合う開放的な住空間が生まれます。
土間空間の上部は吹き抜けとなっており、立体的な視界の広がりと共に家のどの場所にいてもお互いの気配を感じられるような連続性のある空間が開放的であり、同時に家族をまとめてくれるような役割を果たします。キッチン部分はウッドフロアで仕上げていますが、土間と面で揃えているのでスムーズな動線に計画されています。アイランド式のオープンなキッチンはワークトップを広めにとって皆で楽しく料理できそうですね。機能的な什器と造作による収納などが暮らしの舞台としてシンプルにまとまっていますね。
ざっくりとゾーンニングされた2階。家族構成の変化やテイストの変化にも対応できるように余白を残しておくのも家づくりでは大切ですね。吹抜けを介して1階と繋がり、家全体に空気が循環し常に明るい日射しが差し込む性能の高い住宅です。 木の素材で仕上げた勾配のある天井は梁を見せ、ラスティックな雰囲気が広がります。天井からの照明の下げ方やインテリアのトーンが北欧っぽくてシンプルなのにお洒落ですよね。四方に設置された開口からは多様な風景を望め、家の内部と外部がまさに融け合うような大らかな家です。